#16 🌎 私たちはなぜ留学に行くのか、その問いに答える
留学を志したことがあるなら一度は考えるこの質問。私自身もずっと悩み続けたこの質問の解を改めて考えてみました。これから留学を考えているあなたの参考に、少しはなるはず。
「知識は本で得られるのに、なぜ留学に行きたいの」
留学前に、留学経験のある上司に問われた質問。もちろん、当時の私は答えられずに黙ったまま。考えても考えてもその答えは得られなかった。出願エッセイでは、何となくこんなものが得られるはずという想像でエッセイを書くも実感は得られず。そして、私が回答を見つけたのは留学してから。そのときにはじめて、留学に対する納得感を自分の中で持つことができた。
そして、これから留学を考えているあなたなら、同じような問いを受けたり、下記のような疑問を持ったことが一度はあるはず。
留学で何が得られるの?
留学って本当に自分にとってためになるの?
留学に行って失うものは?
本ニュースレターでは、2018年に日本学生支援機構によって行われた、「過去15年以内に海外留学を経験している20~40代の一般の日本人」を対象に行われた調査結果を紹介しながら、「留学で失ったもの」「留学で得たもの」について紹介していきます。本記事では、修士学位を取得した方54名のデータを中心に紹介します。
参考:https://ryugaku.jasso.go.jp/link/link_statistics/link_statistics_2019.html
もくじ
☎詐欺電話がかかってきた
😢54名が教えてくれた留学で失ったもの
😄留学で得たもの
🤔まとめ:なぜ留学に行くのか?
🔙 先週号を見逃したあなたに
☎詐欺電話がかかってきた
今週、詐欺電話がかかってきました。
アメリカのボーダーコントロールと名乗る人からです。彼が言うことには、「私宛の荷物の中に違法なものが含まれていた」とのこと。もちろん、「心当たりはない」と伝えると、彼はこう切り返す。「私の銀行口座も危険にさらされていて、しかるべき処置を行わなければいけない。銀行口座の情報を教えてほしい」ここで、なにかがおかしいと感じて、色々彼に問いただす。どうやら私の個人情報を少しは知っている模様。いくつかのやり取りの後、「あなたどの国からかけているの」と尋ねると、「ナイジェリア」との回答と共に電話がプツッと切れました。
アメリカのボーダーコントロールからの電話なのに、ナイジェリアからかけているのは明らかにおかしい。これは詐欺だと100%確信しました。私を本気で騙すつもりなら、アメリカって答えることもできたのに、ナイジェリアと答えたのは彼の優しさだったのでしょうか。
みなさん、詐欺電話には気をつけてくださいね。
😢54名が教えてくれた留学で失ったもの
留学で失ったものから紹介。ここでは、修士学位を取得するために留学した方々の回答を中心に紹介していきます。
留学で失ったものトップ5は「就職活動の好機」「人間関係・友人・恋人など」「失ったものはない」「年月・時間」「お金」。なかなか興味深い結果です。
イギリス大学院に留学した経験から言うと、この結果にはかなり違和感を感じました。
社会人の場合、留学後は普通の転職になるので、そこまで「就職活動の好機」を逃したとは感じませんでした。留学生向けの就職活動イベント「ボストンキャリアフォーラム」などのイベントに参加することで留学生を積極的に受け入れている企業や、欧米の現地企業と話をすることもできたので、逆に就職活動に関しては機会が広がったと感じます。
「人間関係・友人・恋人」に関しては、まあ失ったでしょうね。もちろん、留学しても切れない縁もあったのですが、環境が変われば人間関係も変わるかなと。また、恋人に関しては、クラスメイトを見ていても、本国に残してきた恋人と別れるケースをいくつか聞いたことがあるので、(これも人によるけど)ありかなと思います。私も、留学中に恋人と別れてしまいました。
「年月・時間」に関しても、1〜2年を留学先で過ごすことになるので、失ったと言えるかもしれません。ただ、この1〜2年を「失った時間」と捉えるかは、捉え方次第でしょうか。私にとっては「留学」は辛いこともたくさんありましたが、「大切な時間」でした。
「お金」に関しては100%合意。留学は自分への投資ですが、私も貯金や退職金などから、かなりのお金を払ったので、私もやっぱり「お金」は失ったと感じます。イギリスに留学した成人男性を調査した他の学術研究でも、「金銭的負担」は留学のデメリットとして挙げられていました。(参考:赤崎美砂(2010)「多様な留学成果:成人の留学とキャリア形成」)
下記で紹介しますが、留学で得たものとして「自信」を挙げている方がいる一方で、「自信」を失った方々がいるのは興味深いですね。確かに留学先では、言葉や文化の違いから、日本と同じように活躍できないので確かに「自信」を失うことが多いです。私も、自信を失いました。でも、その後、自分ができることがわかっていく中で、「自信」は回復したというか、自分の中で吹っ切れた瞬間がきました。ここで「自信を失った」と回答した方々は、その瞬間がやってこなかったのかもしれないですね。
私は、留学中のグループワークの中で、クライアントの英語がわからなすぎて、話についていけず自信を失ったことがあります。それまで、英語で仕事をした経験もあったので、「こんなにわからないってどういうこと?」ってめちゃくちゃ焦りました。本当は弱みをさらすようで言いたくなかったのですが、恥を覚悟で、同じチームのアメリカ人にこっそりと「クライアントが話す英語がわからない。クライアントの話の要約をしてほしい」とお願いしたことがあります。その彼は「いいよ」と快く返事してくれました(その後本当にしてくれたかは記憶にないのですが、してくれなかったと思う)。そんなボロボロな状態の私でしたが、単位を落とすことなく卒業できました。「自信」を失ってボロボロになるんだけど、それをなんとかして乗り越えた暁には、「自信」がつくと思います!
色々なものを失うと言われているけど、私の中では失ったものは「金銭」と少しの「人間関係」というのが結論です。
😄留学で得たもの
そして、気になる留学で得たもの。
トップ5は「広い視野」「語学力」「友人」「積極性」「異文化・国際感覚」。
私自身の経験と照らし合わせても、ここに挙がっているものはほとんど得た感覚がありますね。
「広い視野」は同意。日本を出て、外国から日本を外から見ることになるので、日本をもっと客観的にみることができるようになりました。また、クラスメイトとの交流を通して、違う観点からものを見ることができるようになったと思います。私が印象に残っているのは、「○○(私のこと)は豊かな国日本で生まれ育ったから、ギリシャの悲惨な状況がわからないんだよ」とタイ人クラスメイトに言われたこと。「あぁ、私はやっぱり日本の立場でしか物事を見れてないんだ」と思った瞬間でした。
「語学力」に関しては、修士課程は1〜2年という期間を海外で過ごすことになるので、語学力は多かれ少なかれアップすると思います。ただ、留学生活が始まったら、最初から授業はフルで英語だし、グループワークもレポートも書かなければいけないので、英語力は留学前に上げておくことを強くおすすめしたいです。そこからプラスアルファを留学中にあげていく感じだと思います。
「友人」もそうですね。私は、そこまで友人ができた方ではないですが、今でもたまに連絡をとる、年齡も国籍も違う友人が数人できました。留学前は、「世界中に友達ができるよ」という先輩のキラキラな話を聞いていましたが、クラスにいまいち馴染めなかった私の場合は、連絡をとっていないクラスメイトがほとんどで、数人だけ連絡をとっているという感じです。
「積極性」も、特に留学先では積極的にならないと相手にされないし、どうにもならないので、積極性が身につくと思います。私も、留学中は別人の用に積極的でした。具体的には、知らない人にメールをだしまくって、会いに行っていました。今思うと、異常な積極性を発揮していたと思います。留学が終わってしばらくしたら、次第に元の自分に戻ったのですが(汗)
「異文化・国際感覚」も同意です。例がふさわしくないかもしれませんが、留学先で、いろいろな国やバックグラウンドの人とチームを組む中で、「常に攻撃的な人」「レポートコピペをなんとも思わない人」「SNSばっかりやっている人」「分担した箇所をやってこない人」などと出会ったことで、色々な人に対して耐性がついた気がします。
調査結果で意外だったのは「自己理解」。私自身は、留学先でのグループワークを通じて、自分の強みや弱みがあぶり出されて自己理解が深まりました。Harvard Business Reviewにも、「海外生活経験者、さらに海外での生活経験が長いほど自分自身への理解が深まり、自身のキャリアで何を達成したいのかについて、より明確な考えを持っている傾向がある」という研究成果が紹介されていました。自分自身への理解が深まる理由は、海外生活の中で新しい文化的価値観や規範に触れることで、自分自身の価値観や信念と繰り返し向き合うためとのことです。やっぱり「自己理解」が深まる人は一定数いそうな気がします。
🤔まとめ:なぜ留学に行くのか?
個人差はあるのですが、結局、現地で体験しないと身につかないスキルがあるからです。知識を身につけるのであれば、書籍でもオンライン動画でもいい。しかし、クラスメイトや現地での生活体験から得られる、自身の喪失と回復、自分とは違った文化や価値観をそのまま理解し受け入れる力、日本社会に対する客観的な視点などは、現地で体験しないと得られないソフトスキル。こうしたものを直接体験し、得るために、留学に行くんだと私は現地で気づきました。
ソフトスキルを得るために、何百万円も払う価値があるのでしょうか?
これは、個人の価値観によりますが、留学に行った方々の満足度(下記)が物語っていると思います。
そして、別の調査になりますが、イギリス留学した社会人を調査した方が書かれていた下記の一節がすべて。つまりはそういうことなんだと思う。(赤崎美砂(2010)「多様な留学成果:成人の留学とキャリア形成」)
スキルを身につけると考えるとたしかに高い買い物なんだけど、旅行と同じで、自分が行きたいから行く、それに尽きると思うのです。
🔙 先週号を見逃したあなたに
先週は、「6月締切の奨学金リスト」というテーマで、ニュースレターをお届けしました。イタリア・中国などへの留学を考えているなら、お役に立てるはず。
私がお手伝いできる3つのこと
1️⃣チーヴニング奨学金獲得ノウハウを提供 -イギリス政府が支援するチーヴニング奨学金のエッセイや面接について詳しく解説。読者の中から合格者が複数。
2️⃣ロータリー財団奨学金獲得ノウハウを提供 - 世界中の留学に活用できるロータリー財団の奨学金エッセイや面接について解説。190+名の方がご購読、合格者複数。
3️⃣奨学金のエッセイ執筆ノウハウを提供 - 奨学金エッセイの書き方やストーリー作りについて解説。この記事を読めば、多くの奨学金の出願エッセイに対応可能。
本記事は以上です。最後まで読んでくださった方々、ありがとうございました。